結論から言うと、「きれいなホームページ」を作るハードルは、AIのおかげでめちゃくちゃ下がりました。
私たち制作側もAIを使うことがあります。AIはとても便利。
アクセス解析を渡せば「どのページで離脱しているか」「どの導線が弱いか」「どこを改善すればいいか」まで提案してくれます。
ここまでAIが進化すると、ホームページ制作会社は不要になるのでしょうか。
そうですね。
…たぶん「作る」だけの価値は下がっていくのではないかと思っています。
あるお客さまの話をさせてください。散髪屋さんなんですが…。
ITの「大成功」が、現場の「問題」になったケース
そのお店では、ホームページに「WEB予約システム」を導入していました。
ホームページから予約システムへの新規登録は順調に増えており、CV(コンバージョン)として見ると、とても良い状態でした。
実際、予約表もかなり埋まっており、普通なら「極めて良好」と判断すると思います。
AIにアクセス解析を見せても、おそらく「成果が出ています」と分析するはずです。
でも、少し気になることがありました。
新規登録は増えているのに、“新規予約”があまり入っていなかったんです。
理由は、データには反映されない現場の状況にありました。
新規登録はあるのに、来店するのは常連さんばかり…。
そのお店は、すでに「常連さんの予約で2〜3ヶ月先までほとんど埋まっている状態」だったのです。
常連のお客さまで予約が埋まり、当然、次回予約も入る。
すると、新規のお客さまが「髪を切りたいな」と思ってわざわざ会員登録して予約画面を開いても、直近の予約はすでにいっぱい。
予約を入れたくても、入れられなかったんですね。
その結果、登録だけして離脱(空きがなくて諦める)→他のお店を探す、ということがおそらく起きていると。
制作会社やAIの視点では、CV(予約システムの会員登録)が増加しているから100点満点なのですが、実際の散髪屋さんの視点では「登録が増えても、予約できないんだからお客さまをガッカリさせるだけ。当然、売上にもならない。」
パソコンの画面越しに数字だけを見ていると、この強烈なミスマッチになかなか気付くことができません。
AIの分析だけではもちろん難しいですし、制作会社側も「数字だけ」を追っていると、見落としてしまうケースだと思います。
Webサイトでの新規集客自体は成功していても、その受け入れが十分ではない。
これ、人気店ではけっこう起こってることかも知れません。
そのとき必要だったのは?
新規登録が増えているのに、実際の予約に繋がっていない。
この事実に気付いたとき、考えなければいけないのは、システムの機能追加やデザインの変更ではなく「現場の業務オペレーションをどう変えるか」でした。
仮にデータが「もっと新規登録を増やせ!」と言ってきても、Webの観点から現場の状況を一緒に考えることができれば、こんな「次の作戦」を組み立てることができます。
・新規のお客さま専用の予約枠を作る
・初回来店用の枠を別で確保する
・スタッフ配置や営業時間を見直す
・キャンセル通知を新規のお客さま優先で案内する
・単価を上げた「プレミアム枠」を少しだけ用意する
など、Webという「道具」を入れたことで起きる現場の変化を観察し、時には予測して、業務のオペレーションまで一緒に知恵を絞る。
単に「作る」こと、精度の高い「分析」を提供することの価値は、残念ながら下がっていくと思いますが、
「このお店にとって、本当に良い状態なのか?」
「その会社の商売を理解して、一緒に考える」
という部分の価値は、これからむしろ上がっていくのかも知れないと感じています。
WebやAIは「道具」、使うのは結局「人」
Webサイトをきれいにするだけなら、これからはAIがいくらでも手伝ってくれます。
データ分析の正論だって、AIに聞けば一瞬で教えてくれる便利な時代です。
でも、それをどう自社の現場・業務に落とし込むか。
2〜3ヶ月先まで予約が埋まっているお店の「次の作戦」をどうするか。
そこを考えるのは、AIの計算式ではなく、汗をかいている経営者さまの「商売の勘」「肌感覚」であり、日々の業務オペレーションの工夫です。
実は以前のブログでも「一人で切り盛りする新規事業者のホームページに、あえて予約システムを入れない(スケールダウンする)提案をした」という話を少し書きました。
システムという「道具」を入れること自体が目的になってしまうと、高い確率で現場のオペレーションがパンクするか、今回のようなミスマッチを起こしてしまいます。
「データはこうだけど、御社の今の現場の回り方なら、こっちのほうが現実的ですよね」
そんな風に、画面の数字ではなく、あなたの会社の「現場の空気」や「商売のリアル」を共有すること。
AI時代になるほど、実はそこが大事になっていくのかも知れません。