いつからあるかわからないんですけど、ずっと部屋に置きっぱなしの人形があったんです。
ちょっと古くさいけど、けっこうかわいい子ぐまの…。
「これ、昔からあるよね?誰のなの?」
家族に聞いても、
「さぁ、昔からあるからねー。もう誰のものか分からないけど、そのまま置いてある。」
「ずっとあるし、わざわざ捨てることもないでしょ?」
そう言われただけで、誰も気にしている様子はありませんでした。
ある夜。
カタ…
小さな物音がしました。
気のせいだと思い、眠ってしまいました。
でも、翌朝。
人形の向きが変わっていました。
「昨日、こんな向きだった?」
誰に聞いても、
「知らないよ?」
「気のせいじゃないの?」
そう笑って、気にもしませんでした。
けれど、その日から、夜になると家の中で小さな物音が聞こえるようになりました。
次の日。
人形は玄関にいました。
「誰かが置いたのかな?」
その次の日には階段に。
また次の日には、私の部屋の前。
誰も動かしていないと言うのに…。
わたしは気味が悪くなって、人形を捨てようとしました。
でも、
捨てたはずなのに、翌朝にはわたしの部屋の前にいる…。
何度捨てても。
何度片付けても。
気が付けば、またそこにいるんです。
わたしの部屋の前に。
…
…そういえば、Webの世界にも、よく似た話があります。
これは、私が管理しているWebサイトの話です。
あなたの会社のWebサイトやサーバーにも、ありませんか?
「昔からあるから」「誰のか分からないけど、消していいのかわからないから」「別に、害はないから」と、管理者権限を持ったまま、ずっと放置されている忘れられた人形のようなアカウント。
もちろん、使われていない管理者アカウントがあるからといって、必ず問題が起きるわけではありません。何年もそのままでも、何にもないこともあります。
でもだからと言って、「誰のものか分からない」「誰も管理していない」管理者権限を、本当にそのままにしておいていいのでしょうか。
そしてもし、不要なはずの管理者アカウントが削除できなかったり、削除したはずなのに再び現れたりするのであれば、それはサイトが不正に改ざんされている可能性も考えられます。
…
気付けばいつも、わたしの部屋の前にいた人形。
あの日、
わたしは人形を放置しませんでした。
あのまま置いていたら、どうなっていたのか。
今となっては分かりません。
でも、知らないままでよかった、と今でも思っています。