本当にあった怖い話5~web屋の怪談~

わたしは、職業柄ということにしておきますが、行き当たりばったりが苦手です。

仕事終わりに、同僚に飲みに誘われても、つい「今日はちょっと…」と言って断ってしまうタイプ。

事前にきちんと計画を立ててそれを実行することが性に合っていて、イレギュラーなことを楽しめるタイプではないと思っています。


その日もいつも通りの1日が終わりました。

予定していたスケジュール通りに、何もかも普通に…。

1年前のその日も同じような1日を過ごしていたと思います。

2年前も、3年前も…。

もうずっと長い間、わたしは何も起こらない毎日を過ごしていました。


「つまらなくないの?」

と聞かれることもありましたが、むしろわたしはこの“何も起こらない毎日”に満足していました。


あの日も何もありませんでした。

同僚が飲みに誘ってくれましたが、いつも通り「今日はちょっと疲れてるから…」と言って家に帰りました。

同じ道。

同じ部屋。

何も起きない平和で退屈な日常。


家に帰って、いつものように夕食を食べました。

テレビを見て、お風呂に入り、歯を磨く。

何も変わりません。

スマートフォンを充電器につないで、目覚ましをセットする。

明日の予定を確認して、布団に入る。

いつも通り。

何も起きません。

そのまま眠りにつきました。


目が覚めました。

静かでした。

そして、あたり一面、真っ白でした。

壁もありません。

床もありません。

天井もありません。

風もありません。

影もありません。

何もない、ただ真っ白な空間。

わたしは、自分が立っているのか、座っているのかさえ分かりませんでした。

「何なの?ここ…。」

 

「ここから出よう」

けれど、歩いても歩いても何も変わらない。

何かが突然現れるかもと身構えてみるけれど、本当に何も起きない。

いつか、時間の感覚すら失われ、

「何も起きない」という事実そのものに精神が削られていく。



そして、ふと自分の手を見ると、輪郭がぼやけていました。

指先から少しずつ、白い世界に溶け込んでいきます。

痛みも違和感もなく、自分が「透明」になっていく…。

このままでは、わたしはなくなってしまう…。



「何も起きていないように見える今この瞬間」が、すでに手遅れだったようです…。

何も起きないのではなく、もう、起きるための『何か』が、何ひとつ残っていなかったのです。


…もちろん、夢の話ではありません。

わたしが管理していたホームページの話です。

アラートは出ませんでした。

エラーも出ませんでした。

だからわたしは、何も起きていないものだと思っていました。

でも、何も起きていなかったわけではありません。

わたしには、何も起きていないように見えていただけだったのです。

気付いたときには、もう何も残っていませんでした。


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